Ⅲ 営業革新

 1.ミドル以下から湧き出るもの

 2.営業革新の全体フロー

 3.組織の動機づけ

 4.革新の実行

 


1.ミドル以下から湧き出るもの

 

さいごに、営業を、「考える営業」を実行する組織に変えるためにはどうしたらよいか、を話す。

はじめに、営業組織を革新するには基本的などんな態度でのぞむべきか、わたしの見解を示しておく。以下のとおりである。

 

 

(1)考える営業に変える

 

本社の商品起点の政策を忠実にこなすだけの「考えない営業」から、市場の権力者お客さま接点と対峙しながら自分で考えて考え抜いて目標達成をめざす「考える営業」に変える。

 

(2)トップは営業を変えることができない

 

ごくまれに出てくる長期政権を敷ける改革者や、会社の低迷を背景に改革目的で外から入ってきた変革者、をのぞくと、トップは必ずしも革新をのぞまない。マイナーチェンジを選択するトップもいる。波風を避けて過ごすトップもいる。仮にトップが営業革新がはじめても、23年後の時点で成果が不足していれば、違う考え方のトップが就いて、その変身を止める。また、変化をのぞむトップのやり方が強引すぎるとミドル以下のモチベーションが高まらずに終わってゆく。

 

(3)だからミドル以下から湧き出るものでなくてはならない

 

だから、営業革新は、ミドル以下から湧き出る思いにもとづくものでなければならない。営業組織員の多くが積極的に合意して進んでいるものでなくてはならない。そうして、トップが誰になろうが引き継がれていく取組になっていなくてはならない。

 

(4)個人スキルでとどまらない、組織能力にする

 

営業組織員の多くがのぞんでいる変化だから、個人スキルに留まらない、新しい組織能力の獲得をめざしたものになる。

 

トップが、長期政権を敷ける改革者や、外から入ってきた変革者、ならば、経営の教科書にあるように、組織の革新は、トップダウンですすめればよいだろう。

しかし、実際は、なかなかそういう機会はやってこない。そんな現実の中で組織の改革をすすめる必要があるのならば、日本の会社のトップは、革新を了承しサポートする者であって、米国のようなルールや常識を覆す破壊者を真似る必要はないと思う。日本の会社のトップは、これから会社を背負っていくミドル以下を、変化に敏感な勉強熱心な集団でありつづけることに腐心し、そんなミドル以下から湧出してくる変化欲求に応えて、変身をうながしていく人であればいいと思う。

2.営業革新の全体フロー

 

そんなスタンスを背景に。営業革新の進め方を示すと、以下のようになる。

3.組織の動機づけ

(1)未来営業を考える会

 

まず「組織の動機づけ」段階を説明する。

 

ここでは、ミドル以下から声を湧き出させ、それをもとに長期の営業戦略方向と新しい営業マネジメント体系を示さなくてはならない。そこにいたる方法は以下の3つである。

 

・ありたい姿全営業アンケート

・未来営業を考える会

・ハイパフォーマー・ロングインタビュ

 

以上のすべてを実施してもいいし、1つか2つを選択してもいい。ここでは、未来営業を考える会とハイパフォーマー・ロングインタビュについて紹介していく。まず「未来営業を考える会」から。

 

「未来営業を考える会」の目的は、ミドル以下の未来のありたい姿についての声を、単なる思いではなく、広く深い事実認識のうえで整理して出してもらうことだ。なので、長期の営業戦略を立てる作業になる。

 

第一に、トップが、全国の優秀営業を選定する。対象はミドル中心だが、若い営業や女性も組み込む。本社がもっている市場や社内の調査結果などの参考になる資料は事前に配布しておく

 

第二に、対象者を集め、約30時間で、戦略策定のフレームに沿ってグループ討議をしながら長期営業戦略を立てていく。

たとえば右の構成になる。

(2)ハイパフォーマー・ロングインタビュ

 

もうひとつの「ハイパフォーマー・ロングインタビュ」は、前出の「未来営業を考える会」の目的が戦略としてありたい姿を描くのにたいし、マネジメントとしてありたい姿を描くプロセスである。いくらありたい姿への戦略を描いてもルーティン業務そのものであるマネジメントの有り様が変わらなくては実際の変化は起こらない。ミドル以下が中心に進める点では変わりはない。

 

第一に、トップが全国の優秀営業リーダーを選定し、本社に調査結果などの関連資料があれば配布しておく。

第二に、対象者に各12時間のロングインタビュをかける。事前に以下のような考え方に基づく質問項目を配布する。

第三に、インタビュ結果を未来の営業マネジメント体系仮説としてまとめる。

第四に、その体系を、ロングインタビュ対象者を本社に集め、議論し、全員の賛同を得る。

4.革新の実行

(1)キーアカウント作戦会議

 

「組織の動機づけ」段階で「新しい長期営業戦略や営業マネジメント体系」が出来たら、「革新の実行」の段階に移る。革新の実行は、核の「キーアカウント作戦会議」と、それをサポートする「新しい営業支援システムの立上」「新しい営業体制と評価のしくみの開始」で構成される。

 

「キーアカウント作戦会議」は、「新しい長期営業戦略や営業マネジメント体系」をキーアカウントにたいしてP:計画・D:展開・C:検証のサイクルをまわして実行していくことである。この営業革新のエンジンにあたる部分である。

 

まず選抜されたところでの「先行事例づくり」と、それを拡大していくという意味での「新しい営業の拡大」の2段階に分かれる。「先行事例づくりのキーアカウント作戦会議」は、対象は、全国から選抜チームもしくは、広域・首都圏・地域など部門・エリアを限定しての実施でもよい。

 

進め方は、「先行事例づくり」段階も「新しい営業の拡大」段階も同じで、前出のRPDCの考え方に沿って、

 

1回得意先理解と実績の分析

2回戦略構築

3回四半期レビュ

4回半期レビュ

 

の4ステップが基本で、半年から1年かけてすすめる。

 

そして各回、以下の内容になる。

 

●活動報告

立てたアクションプランにたいしての活動実績、得られた対象得意先情報、つくった戦略などについて報告する

 

●レクチャ&演習

考える営業、戦略立案方法、内外の成功事例などについて学ぶ、演習してみる

 

●プランニング

得意先戦略、アクションプラン、次期アクションプランを立てる

 

●キーアカウントの課題、当社のチャンス

お客さま接点キーアカウントにキーマンを招き、その方針・課題を聞き、当社の取組チャンスを議論して考える

 

●計画発表

立てたアクションプランなどを発表する

(2)新しい営業支援システムの立上と新しい営業体制と評価のしくみの開始

 

核の「キーアカウント作戦会議」をすすめながら、同時に、それをサポートする「新しい営業支援システムの立上」と「新しい営業体制と評価のしくみの開始」をすすめる。

 

「新しい営業支援システムの立上」は、新しい営業支援システムづくり(SFAなどの営業支援システムの作り直し)と、組織能力化に向けてのベストプラクティス共有のしくみづくりである。

 

前記したように、SFAなどの営業支援システムがきちんと使えている営業組織はごく一部の企業のみであり、ミドル以下の声をベースとするこの取組の中で作り直す必要がある。前の段階「組織の動機づけ」の「ハイパフォーマー・ロングインタビュ」の中でも営業支援システムの活用について聞いているので、それを反映させていく。

 

ベストプラクテイス共有のしくみも、営業支援システムのような情報システム内にDBを設けたところで、変化につながる共有はほとんど起こらない。なので、これも前記したように、以下のような施策の組み合わせが必要になる。

 

❶報酬が魅力的な優秀事例発表会の定期開催

❷営業支援システム内にDBを設置する。営業支援システムに類するものが何も無ければ新たにつくる。

❸営業支援システム内での閲覧数や「いいね」数のコンクール

❹成功事例登録数や閲覧数・「いいね」数の人事評価への接続

❺営業マネジメント(マネジャや営業スタッフのルーティン)における成功事例の登録促しと他の成功事例の紹介の義務化

 

「新しい営業体制と評価のしくみの開始」は、商品開発やロジステイクスなどの機能も参加したダイヤモンドフォーメーションや複数営業体制などの新しいダイヤモンド営業体制の導入と、新しい目標管理・評価のしくみ(スコアカード)を機能させることである。

たとえば、4つの営業から大雑把にスコアカードを作成すると次ページのようになる。

担当得意先のスコアと、高い実績を得ているお客さま接点のスコアと比較して格差を埋めていくことを考えたり、売上・利益と各項目のスコアを相関分析して相関の高い項目についてとくに取り組むことにしたりしていく。